目を見張るほどの晴天の下で退職願の用紙を天高く突き上げ、もう片方の手では中指を立てている。
そんな様子を何度も妄想している。
何度もってかエブリデイよ!
毎日のルーティンワークと化しただけあり、どんどんスムーズな妄想ができるようになっていっている。
晴天とはいってもどれくらい晴れているのか?雲は一つもないのかそれとも少しはあるのか?突き上げる中指の角度は?といった詳細な部分まで妄想できるフェーズに突入した。雲は少しある。中指の角度は未だ決まらず。日々、理想のθを模索中。
そんな私でしたが、転職キメました。やってやったぜぇ!思い描いていた青空には恵まれず、引越し手続きでバタバタとバタコさんになり、中指ではなく角を立てまくり退職しました。バタコさんってパートなのかな?
あーあ全然思い通りにいかんなぁこいつぁ困ったものだなぁと頬を撫ぜていると、後輩から「僕も辞めたいです!先輩はどうやって辞めましたか!!?」と連絡が来たので先輩として彼の助けになれるよう尽力したいと思います。
この後輩はですね、こんな私に「叙々苑ご馳走します!」と言ってくれていたすごい後輩。いつだか造花に水をあげてたがそれって
この世で造花より綺麗な花はないわ
何故ならば総ては嘘で出来ている
フォニイ(ツミキ feat.可不)より引用
フォニイってことか……!!!!!!
わしは簡単なことも解らないのに後輩にはわかっていたのだ。すごすぎ。
あと上司に「結婚したら仕事辞めれるっすよ!」と言われたときに「やったーー結婚しよーー!!」とわしが言ったらこの後輩は間髪入れずに「相手いるんですか?」と言ってきたことがある。そんなに深く刺してくるとは思わなんだ。
まぁなんだかんだと初めての後輩だし、先輩先輩とやってきてくれたし私も先輩風をモンスーンの如く吹かせたかったから先輩らしく接した。「先輩何見てるんですか?」とパソコンを覗き込まれたとき、私のパソコンには「こちらイケベ新製品情報局」が表示されていたが彼はチクることなく、なんなら次の日から彼もこちらイケベを巡回するようになった。できた後輩だ。楽器業界は毎日アツいということがわかっている。
あと何がいいってこの後輩はボーナスの時に「ボーナスで買いました!」ってボーナスの倍する楽器を買ったんすよ。わしは機材で金銭感覚バグる人を見るのが好きです。
後輩についてはこれくらいでいいか。じゃあ早速辞めていこう。
早く言わないとたいへん!
わし自身の後悔として正直次が決まった瞬間言えばよかったというのはある。まぁその頃金沢旅行してたんでそんなんしたくなかったんですけど。
でも言うのが遅くて有給が使えなかったのよね。
わしの約40日の有給たちがさよならも告げずにいなくなった(without saying goodbye)とき、わしには確かに有給たちの泣き声が聞こえた。塵や泡や光の粒や、そういったものに姿を変えていく有給たちは儚さと切なさをたたえていた。
「ごめん……」
呟いても、もう遅い。そこには何も残っていなくて、ただ悔恨ばかりが在る。
そんなことにならないためにも もう言いましょう。
「自分、辞めます!!!!」
500ヘルツ80デシベルくらいの声でいいんじゃないでしょうか。
ええええええええ!!!?辞める!!?いつ!!?となったら「いずれ、時は来ます……」と含んだように言えばいいと思います。嘘は言っていません。この世の中、終身雇用なんてまやかしです。
「なので有給使います!!!!!」
間違ってないけど間違った接続詞の使い方で相手に口を挟む隙を与えないまま、有給の届出をガリゴリガリ!と記入し、その場で退勤。
これで明日からしばらく来なければいいのです。有給を無駄にするくらいなら早めに使ったほうがいいし、辞めたかったらそのまま辞めたらいいしどっちに転んでもリターンありです。とりあえず有給取って休みながらのんびり考えましょう。
有給を取りやすくするための下準備
とは言っても、なかなかそう行動できない……
まずは種を蒔くことです。少しずつ、やっていきましょう。
まずなぜ上司に言いづらいのか?
上司が先のことを考えて嫌になっちゃうからです。そうならないためにも、まずは上司を辞めさせましょう。
辞める人間は先のことなんて考えないので、無敵です。あなたも無敵だし、上司も無敵。
明日から毎日、目につくところにゼクシィを置きまくる女のように、上司の机に求人誌を置きまくりましょう。
嫌でも転職がチラつくはずです。
そこで機を逃さず、「自分……セントビンセント・グレナディーン諸島に行ったんですけど見識変わりましたよ。狭い世界でしか生きてなかったなって思いますね」と言いましょう。上司の見ている世界がいかに狭いか、いかに視野狭窄か、その脳髄に叩きこんでやるのです。
上司ももうアワ……となり始めます。そこで、褒め称えます。
「上司さんがいつも先陣切って仕事してくれるんで本当に助かってるし尊敬してます!そんな人を失うのはつらいですが……自分は上司さんの選択を応援します!」
そのまま、もういなくなることを確定させてやりましょう。人間は混乱する生き物です。あっあぁ、俺っていなくなるのか……?と上司に思わせたが最後、その勢いを殺さないことだけがあなたの仕事です。
ここまで来たら胸の前で手を組み、「旅立ちの日に」を熱唱しましょう。
余裕があれば「COSMOS」を追加で歌ってやってもいいです。あなたのアツいお見送りの気持ち、COSMOSの名曲っぷりに上司も涙を禁じ得ません。
贈り物はハンカチーフがいいでしょう。上司はすかさず涙をふくことができるので助かります。
あなたもマイハンカチーフを取り出して振りましょう。シンクロ効果が働き、上司もハンカチを振ります。こうなればしめたものです。お別れの確定演出です。これで辞めないなんて、詐欺です。
これで上司が辞めることは決まりました。あとは自分も、と伝えることでお前もか~!と上司はカエサルのようなことを言い、絆は深まります。同苦の体験。同じ苦しみを味わうと人は結束が強まるものです。
この際上司と同じところに転職するのもいいでしょう。退職というつらく苦しく難しいものを一緒に乗り越えたなんて、もう家族のようなものです。
万が一うまく転職できなかったとて、家族である元上司を頼ればいいのです。それはちょっと……となったときは、「家族って結局、他人ですか?」と吐き捨てるように聞いてみましょう。そんなことはないよごめんねと謝ってくるでしょう。余裕です。
これで退職はできるんじゃないかな?
やってみなきゃわからんことだらけなんだし、色々時間をかけて見てみていいんじゃないかなと思うし失敗したっていいのさと思います。失業保険と職業訓練校コンボも良いと思うよ。
大丈夫だ後輩。君の目の前には無限の世界が広がっているよ。
以上の内容を「#わたしの転職体験」で投稿しました。結果が楽しみですねと言われましたが、まことにそう思います。
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